薬用草木 ──果実がきれいな薬用草木

表紙の花 オタネニンジン

オタネニンジン

高麗人参、薬用人参、朝鮮人参、これらはいずれも同じものをさしている。地下部が有名な滋養強壮の生薬(しょうやく)で、独特のにおいがあって味ははじめ甘く後に苦い。効果は非常にあらたかで、中国、韓国には愛好者が多い。江戸時代に徳川吉宗が栽培を奨励して以来輸出産品で、日本産は高品質であるとして人気が高いが、近年は栽培農家の高齢化が進み、産出量は少量になってしまった。
Panax ginseng C.A.Meyer

1月 ダイダイ

ダイダイ

家がダイダイ(代々)繁栄しますようにという願いを込めて鏡餅の上に載せるものと言われる。果皮と小さい未熟果実を健胃作用が期待される生薬(橙皮[トウヒ]・枳実[キジツ])にする。
写真の実の、いわゆるおしりの部分がほんのり緑色であるが、これはいったん橙色になった果実がまた緑色に色づき始めている様子である。 これを若返りと捉えておめでたい飾り付けにしたとも考えられるという。
Citrus aurantium Linné var. daidai Makino

2月 ジャノヒゲ

ジャノヒゲ

龍の髭(ひげ)ともよばれる玄関先や店先の植え込みにある植物である。冬期にみられる真っ青な実が美しく、また踏まれても枯れない強靭さが好まれて
たくさんの園芸品種が開発されている。よく似た植物にヤブランがあり、こちらは花の美しさで園芸植物としての地位を獲得している。
根の膨大部(長い根の途中が膨らんでできるこぶのような組織)を麦門冬という生薬にする。咳止めの効果のある処方に配合される。
Ophiopogon japonicus Ker-Gawler

3月 ボスウェリア(乳香の木)

ボスウェリア(乳香の木)

ボスウェリアはもともとアフリカとアラビア半島の一部のみに生育していた、寒さと多湿に極端に弱い植物で、一般にはほとんどお目にかかれない植物である。
この植物の幹を傷つけた時に浸出する乳液が固まったものが乳香(にゅうこう)である。キリスト教の聖書にも登場する乳香は薫香料として古くから中東地域で珍重され、やがて香料として世界中に広まった。日本で花が咲くのは珍しく、果実が得られるのはもっと珍しい、その果実の写真である。
Boswellia carteri Birdwood

■解説   伊藤 美千穂先生(京都大学大学院薬学研究科 准教授)
■撮影協力 武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
■写真   近江 哲平[富士精版印刷株式会社 撮影スタジオ]
■デザイン 河野 公広[富士精版印刷株式会社 東京支店]
■カラーマネージメント 滝口 章人[富士精版印刷株式会社 プリプレス部]